波の音に耳を傾け
戦火の叫びから逃れようと
兵士はひとり 沖に出た
修羅の世界を忘れる為に
鎧を脱ぎ 兜を捨てて 沖に出た

激しく揺れる小舟の上に
男はひとり 腰掛けて
遠く遠くへ 旅に出た

やがて吹く風も穏やかになり
波も静かな物となった
それはまるで陵夷の様だと
男はそっと呟いた
それは波の音に消される程に
小さな小さな声だった

よく見てみれば空は青くなっていた
赤くもなければ黒くもなく
どこまでも続く青天であった
戦は遠く彼方の話だと
空は笑って語るのだった

流れ着いた地で
懐かしき友と再会を果たした
男はひとりでなくなった

友は戦の終わりを告げた
勝敗すらも分からぬ程に
敵も味方も滅んでいったと
死を覚悟して退却を選んだ者だけが
生き延びる道を掴んでいったと

男は友の言葉を受けて
やはり陵夷の様であると
戦の終わりを喜んだ
悲しい悲しい 笑みを浮かべて


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恐ろしや 恐ろしや
亡き者現る闇の刻(とき)

悪魔の宴が始まって
明ける事なき夜を愉しむ

恐ろしや 恐ろしや
前菜に振る舞う赤子の肉は
攫ったばかりの乳飲み子か

飲めや歌えや どんちゃん騒ぎ
喰われし赤子も仲間入り
欠けた手足を補う為に
赤子の親から四肢を奪った

恐ろしや 恐ろしや
この闇は今なお晴れてはおらぬ

神の力も及ばぬとばかりに
悪魔は我らを見て嗤う
次の皿に盛るのは誰か
そんな言葉を交わしながら


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